ラブホの前を通り掛かったら

女「ホテルいきたいの?」
男「ホテルいきたいの…」
(両者とも猫なで声で)

というやり取りを目の前でやっててアホかと思った。自分の人生が。俺だってホテルの前でどうしようもない駄々をこねくり回したいの…。相手の終電時間を確認しながら漫画喫茶で粘る生活はもううんざりなの…。その気も無いのに愛なんか囁いて、嬉しそうなその寝顔を見て傷付かないハートが欲しいの。ホテルいきたいの、セックスがしたいの、後の事とか、先の事とか、萎える話題はシャットアウト。バベルのように建設的で本末転倒な恋愛とやらをしてみたいだけなのさ。嗚呼そうこうしてるうちに去年より少し勢いの増した足取りで今年も夏が行く。ひとつ下さい、切符を下さい、俺だってあの楽しそうな灯りの下に…この手の平に最後のマッチなど既にありはしないのに。